不動産探しと暮らしのアイデアを伝授!住まING

トップ > 令和2年6月> 10日

家への思い入れを共有したい(1)

2020年6月10日「水曜日」更新の日記

2020-06-10の日記のIMAGE
Sさんは結婚後長年マンションに夫と二人だけで住んでいましたが、夫の実家を増改築して夫の母親と同居することになりました。実家は、いくつもの和室とうす暗い廊下のある和風住宅です。築後かなり経っていてだいぶ老朽化していましたが、それなりに古い住まいの持つ落ちついた雰囲気を持っていました。Sさん夫婦が使うことになった部分は、長く使われず手入れをしていないせいもあって、かなりひどい状況でした。二世帯で住むには間取りの変更も必要でした。同居にあたって、母親と子世帯は、これから両者でどういう生活を展開するかについてはほとんど話し合わず、子世帯が使用する部分と、台所は別につくることぐらいが決まっていました。その上Sさん夫婦の間でもつっ込んだ話合いはないままの状況で、設計の打合せが始まったようでした。最初の打合せの時、Sさんの夫から「ぼくは忙しいので、君(Sさん)にまかせる」とのこと、その後の打合せはすべてSさんとすることになりました。つまり、古い家に愛着のある夫や義母の全くタッチしない打合せとなったわけです。マンション住まいの長かったSさんは、機密性、明るさ、フルタイムの仕事を持っているので家事管理のしやすさ、に重点を置きました。また、インテリアに興味もあり、いつも室内に多くの観葉植物を配し、自分の好みに合わせて室内をアレンジして暮らしていたので、増改築にあたってもすべて自分のイメージどおりの住まいにしたいという思いがありました。古い家への愛着よりは、むしろ夫の家族とは別の自分の城を築きたいという思いもあったようです。そういうSさんとだけ打合せするわけですから、彼女の希望にそうよう、汚れた壁や天井にP・B・クロスを貼り、タイルを貼り、システムキッチン、出窓をつけて、使いやすく明るい清潔なリビング、ダイニングキッチン、サニタリーなどを設計しました。完成した図面・見積りの説明の時点で、初めてSさんの夫の考えを知ることができました。具体的には、居間は狭くてもよいから客用和室を残したい。階段の段板まわりもひどく汚いけれど、そのままにしてほしい(妻はじゅうたんを巻き込みたかった)、寝室に使う和室の六帖は思い出のある部屋だから手をつけないでほしい等々ですが、古いものをビニールクロスでカバーしてしまおうとする妻と設計者の無神経さが不愉快だったようです。

このページの先頭へ