不動産探しと暮らしのアイデアを伝授!住まING

トップ > 令和2年6月> 9日

今を心地良くMさんの作戦(2)

2020年6月9日「火曜日」更新の日記

2020-06-09の日記のIMAGE
・居間を二階につくると
Mさんの思惑とはまた別に、居間を二階にとるといくつかのメリットがあります。日照、眺めがよいこと、プライバシーが確保しやすいこと、それに天井を屋根なりに斜めにしたり構造材をそのまま表すことによって、フラットな天井にはない豊かな空間をつくりやすいということです。また上に乗る荷重が小さいので、構造的にも大きな空間をつくりやすいということもあります。一方、一番大きなデメリットは、外部からのアプローチがどうしても長くなり、階段を使ったものになることです。そのために、玄関を中二階や二階にもってくることもあります。Mさんの家では、以上のようなことを考慮に入れて、居間を一階と二階につくった二つの案を検討した結果、二階案に決まりました。その結果、屋根勾配にそった高い天井によって大きなボリュームをつくり、居間の狭さを補うこともできました。陽当たりがよい上に、吹抜け天井によるヒートロスを考えて床暖房にしてあるので冬は暖かく、夏は屋根からの熱を逃すために小屋裏のトップライトをあけて風が抜けるようにしてあります。物理的にも空間的にも居間の居心地が大変よいので、家族が居間にいる時間を長くしているようです。以前の家より居間がいつもすっきりしていて、「作戦が当たった」とMさんの弁。「子どもたちも居心地がよくて、居間で本を読んだりしている」とのこと。さらに、「夫が、してやられたと言いながら自分の部屋で着替えをして居間に上がってくるようになった」そうです。この家では、二階の居間での家事を楽にするために、いくつかの機械装置を利用しています。玄関扉の開閉を居間でコントロールするオートロックや、一階にある風呂を二階でコントロールする全自動風呂釜、各部屋につけたインターホンなどです。設計者としては、万一の機械の故障についての不安や、省エネ、省資源の立場からも、こんなに機械に頼ってよいものか、という思いもありました。しかし、引越して数年後、Mさんが足を捻座され歩行が不便だった時、「オートロックなどのおかげで、二階に居間があってもほとんど不自由なく家事ができました」という電話に、ああよかった、とホッとしました。もちろん、Mさんも私も納得ずくでの設計ではあったのですが。

このページの先頭へ