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マンションの「建て替え問題」

2018年9月19日「水曜日」更新の日記

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 14年度の税制には、老朽化マンションの建て替え促進策も盛り込まれています。建て替えによる売却に1500万円の特別控除をもうけるほか、長期譲渡所得の軽減税率、建て替えたマンションを取得する際、譲渡がなかったとみなす特例、不動産取得税・登録免許税の非課税などがズラリと並んでいます。  しかし、そもそもマンションの「建て替え問題」を前提とすること、つまり、建て替えしか選択肢がないかのような論自体に疑問を感じる向きもあります。そもそも、容積率を引き上げるなどのボーナスを与え、すべてのマンションが建て替えられるようになったとしたら、人口・世帯数減少が確実な我が国で、いったいどれだけの住宅が余ることでしょうか。  日本の住宅数はすでに飽和状態に達し、都市部においてすら空き家対策に本腰を入れなければならない局面に差し掛かるというのに、建て替えを促進したらどうなるのかということです。  これはもっともな意見です。そもそもマンションが一度建った場所に、ずっとマンションを建て替え続ける必要はありません。別の用途に転換される可能性を残すほうがむしろ自然です。ですから「マンションの建て替え問題」などと表現して、いかにもそれ以外に選択肢がないかのような考え方をやめ、別の選択肢をつくればいいのです。  建て替えばかりを前提とするから話が難しくなるのです。必ずしもすべてのマンションを建て替える必要はありません。アメリカやドイツ、フランスは、区分所有権を解消して建物解体、土地を売却して終わりです。  そこで国交省は「多数決議による売却決議」を検討しています。これは要するに建て替えるのではなく、建物を解体し土地を売却、その代金を所有者で山分けして終わり、という道です。現在は決議要件がないため、こうした措置には民法の原則に従い所有者全員の合意が必要です。しかし、これを多数決で行えるようにしようというわけです。  一定の賛成があれば、全員が区分所有権をまとめて売却するという選択肢をつけておくやり方は、日本の住宅市場の現状と未来を踏まえれば、むしろバランスの取れた結果を生み出すのではないでしょうか。  現実的には、駅に近いなどの一部のマンションにだけ容積率のボーナスを与えて建て替えを促し、その他の老朽マンションは、管理組合を「解散」して建物を解体することになるでしょう。  しかし、国がこうした方策を打ち出しても、結局はマンション所有者で構成するコミュニティで、粘り強く話し合いを行いながら、意思決定をする必要があることには変わりありません。したがって、建て替えや解散を行うマンションは、国がさまざまな方策を打ち出したとしても一部にとどまり、大半のマンションは建物や所有者の高齢化という現実に向き合いながら、建物の保全に努めていくことになると思います。

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