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白木の肌と塗った木肌

2018年3月3日「土曜日」更新の日記

2018-03-03の日記のIMAGE
 ヨーロッパ文化と日本文化の性格を比較する時、「金の文化」または「石の文化」に対する「木の文化」と言うとよくわかります。それは材料が文化の性格の裏付けになっているからです。 しかしヨーロッパでも木は多量に使われていて、ヨーロッパ流の「木の文化」をつくってきています。その違いは、ヨーロッパが広葉樹材を中心としているのに対し、日本では針葉樹材を中心にして発達してきたところにあると言ってよいと思います。  たとえば現在、私たちが洋風の建物のインテリアや家具の用材として使うのは、ほとんど広葉樹材です。一方、和風の伝統的な建物はすべて針葉樹材で、広葉樹材が使われるのは、むしろ例外に属しています。言い換えれば、西洋におけるインテリアの構成は広葉樹を基盤として成り立っており、日本においては針葉樹を主材として構成されてきたということです。  このように針葉樹材と広葉樹材が、その使われ方に東と西ほどの相違が生まれたのは、2つの材の細胞組織の違いによるものです。針葉樹の木肌は精細でキメが細かく、柔らかな絹糸光沢をもち、白木のままで美しく、絵絹のようなうるおいがあります。一方、広葉樹のほうは組織が複雑で木目は変化に富み、材質は堅硬だが材面は荒い。だから削ったままの肌では美しくないけれども、いったん塗装をすると、がぜんきれいになります。つまり木肌で比べると、針葉樹の白木の肌が日本画の絵絹であるとすれば、広葉樹は洋画のカンバスにあたり、それぞれ違った味わいを持っているということです。  以上のようにみてくると、広葉樹材がヨーロッパの石材や金属に囲まれた居住空間の中に居心地の良さを見出し、針葉樹材が木と紙と畳の住まいの中で主材になったのは、ごく自然の成り行きであったと言えます。私たちが洋風のインテリアで木材に求めているのは、主として塗装された広葉樹の材面であり、一方、和風の室内においては針葉樹の白木の肌を求めているのです。  ところで加工に使う刃物も、針葉樹と広葉樹では違います。柔らかい針葉樹には刃物の角度は小さいほうがよいけれども、硬い広葉樹は角度を大きくしないときれいに削れません。いわゆる指物師と言われる人たちが簡単に洋家具を作れないのは、硬材の刃物になじみにくいためなのです。違った材料を使い工具を異にすれば、生み出される作品が変わってくるのは当然のことです。 造形材料としての木材の中に、針葉樹の白木の肌を基調にした日本的な流れと、塗らなければ味の出ない広葉樹の西洋的な流れとが生まれて、明らかな対比をみせるようになったのは、材質の違いを考えればごく自然のことのように思われます。

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