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恵まれすぎた環境が仇

2018年2月26日「月曜日」更新の日記

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 ヒノキの人工造林の山を見ると、全山がヒノキで成り立っていますから立派です。一方、天然の林というのは、いろいろな木が混じり合うというのが本来の姿ですから、写真映りは貧弱です。人工林では養分を下木や下草に取られないために、刈り取ってしまいます。  ところがその保護が、やがて仇になって返ってくることがわかってきました。というのは、ヒノキの葉は地上に落ちると、うろこのようにバラバラになるので、雨のたびに流されてしまう。 地表はいつも裸になりますから、地味は痩せていきます。最近になって、保護しすぎることはかえって木のためにならないと反省されはじめました。人工的に保護すことは必要だけれども、その度がすぎると悪くなることにやっと気がついたのです。  次はカラマツの話をしましょう。信州は土地が痩せているから、カラマツの適地です。北海道も痩地が多くて寒いので、信州からカラマツを移植しました。それがよく育って、いまようやく伐採の時期を迎えました。近い将来には道産材の3分の1を占めて主役になると期待されるほどになりました。ところが人エカラマツは材が反って使えないというのです。その理由は、次のようであることがわかりました。  天然カラマツは親木の下に生えて、わずかに漏れくる陽光を受けながらゆっくり育ち、親木に届くまでに30年近くもかかります。ところが人工林の場合は伐採された跡地ですから、幼児の時から陽光が十分に当たるので、どんどん育ちます。その時生まれた細胞は斜めに並ぶので、加工すると反ったり狂ったりすることが判明しました。恵まれすぎる条件は仇になるということです。  もう一つの例をあげましょう。最近問題になっている「スギ山崩壊」の話です。  九州の山々は特産のシイ、タブ、イスの原生林で覆われていました。しかしそういう雑木は価値が小さい。これをスギ林に変えれば立派な山林になるはずです。そこで全山を伐採ししてスギに植え替えました。劣等生の山林がやがて優等生の山林に生まれ変わる計算だったのです。ところが、10年ほど経ってようやく全山が緑で覆われるころ、スギ山は至るところで崩壊が始まりました。  その代表的な例が、熊本県と宮崎県の境にある市房山です。ここは動物や昆虫の種類の多いことで有名な所でしたが、いまや全山が爪で引っ掻いたような赤禿山になってしまいました。元に戻るには数百年を要するだろうと言われています。  これがもし教育の問題だとしたら、大変なことです。考えてみると「保護すれば弱くなる」というのは、生物学の大原則です。その保護を昔はやろうと思ってもできなかったけれども、今は何でもできます。しかし、それは時としてマイナスの効果になることに注意しなければなりません。そのことを、木は黙って教えているのではないでしょうか。

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