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工業材料と工芸材料

2018年2月24日「土曜日」更新の日記

2018-02-24の日記のIMAGE
 バイオリンにしても琴にしても、科学技術が長足の進歩をした今日でも、木を使う古い伝統の製作技法はいささかの改良案も寄せつけません。弦楽器の響き板には、今のところ木に代わる材料は見当たらないし、それも天然の木の中から良いものを選び出すよりほかに方法がないようです。このように考えてくると、木は実は最も高級な神秘性を持つ材料ということになります。いま木が見直されようとしている理由の一つはそこにあると、私は思います。  私たちは、木の香も新しい白木の肌を好むだけではありません。時が経てばやがて灰色にくすんでくる木肌を、今度は「さび」といった独特の世界観の対象にして、別な立場から愛でています。さらにまた、木肌の魅力を生かす技とセンス、加うるにノミの冴えによって、美意識はいっそう高められることになります。だから日本では、木は単なる材料というよりも、銘木のように美術品として取り扱われることが多いのです。一般の用材の中にもそうした考え方が入ってきますから、日本人の木に対する評価は、理性よりも感情が優先するのです。  その一例に、木材規格があります。1等材は2等材より特に強いわけではないし、腐りにくいのでもありません。ただ表層の見てくれが、少しばかり美しいか美しくないかだけの差に過ぎません。それなのに値段はべらぼうに違います。こういう評価の仕方は合理性に欠けていて、工業材料という立場から見ると大変におかしいのですが、木についてはそれが当たり前のこととして通っています。つまり木は、工業材料ではなくて、工芸材料であり、ある場合には美術材料でさえあるのです。

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