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木を味わう感性

2018年2月23日「金曜日」更新の日記

2018-02-23の日記のIMAGE
 日本では明治の初めまでは、建築も彫刻も工芸もほとんど木で作られていました。だから材料的にみるなら、日本の造形史はすなわち木の歴史ということもできるほどです。  ところで、木は金属、ガラスなどの工業材料と比べてひと味違った性格を持つ材料です。そのことを私たちは体験を通しておぼろげながら感じとっていますが、相違点はどこかと聞かれると、明確には答えられません。それをつきつめていくと、工業材料は鉱物系で、木は生物系だというところに落ち着きそうです。  お菓子の折を前にするたびに思うことですが、羊羹をスギの箱に入れると、一段と美味しく感ずるのは不思議です。プラスチックとチョコレートはしっくり合いますが、羊羹はどうもプラスチックとは肌が合わないらしい。寿司についても同じことが言えます。握りはヒノキの一枚板の上で食わないとうまくないが、寿司屋の親父さんは、あの白い木肌を美しく保つために毎日大変な苦労をしています。デコラ張りの板の上で食ってくれれば大いに助かるのだが、それではお客が承知しません。これも木肌の持つ神秘性のゆえんでしょう。ビフテキの肉はステンレスの上で切るが、刺身はヒノキのまな板でなくては駄目です。ビフテキと刺身の味の距離は、金属と木材、そしてまた西洋と日本の肌の違いと言ってよいようです。  建物を造るとき、設計者は大変に細かい神経を使って材料を選びます。タイルの色の濃い淡いや、ちょっとした汚れで、職人さんはけっこう泣かされます。ところが、いったん建物が出来上がると、正面の入口にはヒノキの一枚板を削って、墨太に屋号などを書いた看板を掛けます。ひと雨降ればすぐに汚れることはわかっているのに、白木の汚れは一向に気になりません。むしろそれによって風格が付くという日本的な安心感があるようです。これも木肌の持つ神秘性と言ってよいでしょう。

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