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日本人の自然観

2018年2月22日「木曜日」更新の日記

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 家は気候風土と長い生活の積み重ねの中から生まれてきた、文化の産物ともいうべきものですから、土地と切り離して考えたのでは意味がありません。ということは、ヨーロッパの家がどんなに立派でも、日本という風土の中にそのまま移したのでは合わないし、和風の家がいかに美しくても、ヨーロッパに建てたのでは住みにくいということです。  日本の家とヨーロッパの家とのいちばん大きな相違点の一つは、室内と戸外とのつながり方にあると言ってよいでしょう。日本人は、植物も動物も人間も、元は同じ根から出た自然の中の仮の姿であり、この世をついの棲み家とする仏教的人生観を持っています。私たちの伝統的な住まいも、この人生観のうえに立って造られてきました。だから自然の中に溶け込んで、細い木の柱を立て、障子をはめ、縁側をまわすという形が基本になっています。障子を開ければ自然があって、戸外の緑と室内はひとりでにつながっています。庭は借景でことが足りるし、虫も鳥も家の中に入ってくるのを拒みません。山も森も全体として一つのもの、という哲学が基盤になっているのです。  一方ヨーロッパでは、人間は自然と対立するもので、自然を征服する所に芸術も文化も生まれると考えました。だから住まいは石や煉瓦の厚い壁で囲まれているし、重い扉は空気でさえも遮断しています。インテリアとエクステリアは画然と区切られていて、都市はそのまわりを頑丈な城壁で囲まなければならなかったのです。  木にはまた、仏教の無常観に通ずる面もありました。日本人は自然も社会も常に移ろい変わるものと悟って、その法則に従うという生き方をしてきましたから、木のように朽ちて自然に還る材料に、なぜか心を惹かれたのです。そこからヨーロッパの「石の文化」に対する日本の「木の文化」の対比が生まれたのです。私たちが緑に囲まれ、木の家に住みたいと思うのは、そうした長い生活の歴史があるからだと私は思います。

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