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「木用貧乏」

2018年2月21日「水曜日」更新の日記

2018-02-21の日記のIMAGE
 木が材料としてのいちばん大きな特徴は、木目があるということです。気候に寒暖の差がある地帯に生える樹木には、一年ごとに年輪ができます。年輪の幅は、樹齢、土壌、気温、湿度、日照などの記録ですから、年輪にはその年ごとの樹木の歴史が刻み込まれます。つまり木目は幾星霜の風雪に耐えた木の履歴書なのです。  人間にもまた、年輪があります。それは精神の中に刻み込まれますから、樹木の年輪のように定かではありませんが、その人の経験と生きる努力の中から生まれてくるものです。だから私たちは木の年輪の複雑な文様の中に、自然と人間との対話を感じとるのです。それが木肌の魅力の最大のものと言えるでしょう。したがって、木は人によって生かされ、人によって使いこまれた時、本当の美しさがにじみ出てくるのです。  私たちは物を作る時、構造とか技法とかを考える前に、材料の選択に大きなエネルギーを使います。それが出来上がりの美しさを決定的なものにするからです。しかし、西洋の美学ではそういう考え方はしません。どんな材料でも意思と知性と美意識を持ってやれば、人間は立派な美術品を作ることができると信じています。こうして見てくると、日本人の精神構造と美意識、さらに自然観は、木ときわめて密接な関係を持っていることがわかります。  そういう素質を持つ日本人だから、木を利用するにあたってもその発想が違ってきます。木を手にしてまず気になるのは、美しいかどうかということです。工芸的な判断が先に立つから、工業材料としての冷静な対策が出てきません。器用貧乏ではなく「木用貧乏」なのです。

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